駅前のコンビニに、アルバイトの女の子が入ったらしい。小麦色のはちきれそうな肌、黒い瞳とカールした髪。日本語はほとんど話せないらしく、先輩の女性店員の身振りに目を凝らしている。
やがて先輩店員と交代で、彼女もカウンターに立つ。私が置いた買い物を、唇を引き結んで一つずつレジに通す。お釣りと一緒に、彼女が赤い紙箱を出して私に突き出す。
箱の中の三角くじを一枚取って、時計に気をとられながら私は上の空でそれを彼女に渡す。彼女は真面目な顔でくじを開くと、むずかしい顔で首を振り、それを不要レシート入れに突っ込む。
レジ袋を取って立ち去りかける私に、彼女はもう一度箱を突き出す。え、もう一枚?という私の表情に、彼女は力強くうなずく。再び彼女が私の選んだくじを検分し、今度はにっこりとうなずいて冷蔵庫に走っていく。帰ってきた彼女は、ぶどうジュースをしっかりつかんでいる。
ぶどうジュースを渡されて、私は目で問いかける。いいのこれ?彼女がさらに力強くうなずく。そして満足そうににっこりする。
外に出て、ぶどうジュースを眺めながら、どうして気に入られたんだろうな、と考える。店に入った時、品出ししていた彼女とちょっとぶつかったからかな。ごめんなさいがうまく言えなかった埋め合わせのつもりかもしれない。
後で先輩に叱られなきゃいいけど、と私は思う。明日買い物する時は、ぶどうジュースをひとつ余計に買うことにしよう。
July,2017